広島高等裁判所松江支部 平成8年(行コ)2号 判決 1997年12月05日
松江市東津田町二二六一番地二四
控訴人
福田泉明
右訴訟代理人弁護士
高野孝治
松江市内中原町二一番地
被控訴人
松江税務署長 板倉國雄
右指定代理人
内藤裕之
同
小林英樹
同
松井重利
同
松田亮
同
山﨑保彦
同
牛尾義昭
同
河島功
主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人が控訴人に対し昭和六三年七月一二日付けでした
(一) 控訴人の昭和六〇年分の所得税についての更正(但し、審査裁決により一部取り消された後のもの)及び過少申告加算税賦課決定(但し、異議決定及び審査裁決により一部取り消された後のもの)のうち、総所得金額を金六五一万六八五三円として計算した額を超える部分、
(二) 控訴人の昭和六一年分の所得税についての更正及び過少申告加算税賦課決定(但し、異議決定により一部取り消された後のもの)のうち、総所得金額を金四二九万〇〇八〇円として計算した額を超える部分
(三) 控訴人の昭和六二年分の所得税についての更正及び過少申告加算税賦課決定(但し、異議決定により一部取り消された後のもの)のうち、総所得金額を金三三九万六〇四九円として計算した額を超える部分をいずれも取り消す。
3 訴訟費用は一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 控訴の趣旨に対する答弁
主文同旨
第二当事者の主張
原判決事実欄の「第二 当事者の主張」に記載のとおりであるから、これを引用する。
第三証拠
原審及び当審記録中の証拠関係目録の各記載を引用する。
理由
一 当裁判所も、控訴人の請求は棄却すべきものと判断する。その理由は、次の1ないし6のとおり補正するほかは原判決の理由と同一であるから、これを引用する。
1 原判決二五丁表七行目の「(1)、(2)」を「<1>、<2>」と訂正する。
2 原判決二九丁表四行目から三〇丁表五行目までを、次のとおり改める。
「確かに、控訴人の営む建築塗装工事業は、人手による部分が大きい(控訴人本人、甲三七)。しかし、現実に塗装工事を行うのは、従業員には限らない。この業界では外注率が高く(甲三七)、必ずしも従業員の数と事業規模との間に対応関係があるとはいえない。そうすると、従業員の数は比準同業者抽出の不可欠の要素ではない。かえって、これを抽出基準に加えると、抽出される比準同業者の数が少なくなりすぎ、合理的な推計ができなくなるおそれすらある(証人矢野聡彦)。
とすれば、従業員数等を比準同業者の抽出基準に加えなければ合理的な推計ができないとの控訴人の主張は理由がない。
また、控訴人は、本件比準同業者七名の所得率にはかなりの偏差があり、しかもそれは二極化しているから、二種類の規模の業者が混在しており、これをそのまま比準同業者とすることはできないと主張する。
確かに、本件比準同業者七名の所得率にはかなりの差が認められ、二極化しているようにもみえる。しかし、塗料費額が仮に同じであっても、営業能力や作業員の技量等により、工事代金には当然差異があり、その差異により、所得率の差は通常生じ得る。そもそも本件比準同業者七名は塗料費額の倍半基準という広範囲の業者から抽出されたものであるから、この程度の所得率の差は当然生じ得るものと解される。このことから被控訴人の推計の合理性が否定されるわけではない。
よって、控訴人の右主張は理由がない。」
3 原判決三四丁表一〇行目から一一行目にかけての「合理的な疑いが容れない程度に」を削除する。
4 原判決三五丁裏七行目の「支払金額の記帳」を、「支払金額の記帳の一部」と訂正する。
5 原判決三七丁裏一一行目から一二行目にかけての「合理的な疑いを容れない程度に」を削除する。
6 原判決別表(2)<5>算出所得金額の昭和62年分「¥11,681,113」を「「¥12,281,113」と訂正する。
二 よって、原判決は相当であって本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 林泰民 裁判官 石田裕一 裁判官 水谷美穂子)